1.労使協定とは
労働者集団の代表と使用者が結ぶ労働条件や労働者の待遇についての特別な合意です。
労使協定の締結当事者は、当該事業場の使用者と次の①と②のいずれかです。
① 労働者の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合
② 上記①の労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者
労使協定は 当該事業場の全労働者に適用されることが予定されています(労使協定の中で適用範囲を限定するものもあります)。
労使協定のほかにも、労働条件の合意書面という点では、集団的労使関係においては労働組合と締結する「労働協約」(協定書・確認書・覚書等)、個別的労使関係においては「労働契約」があります。前者は組合員に対して適用され、後者は労働者個人に対して適用されます。

2.労使協定の効力
「その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものであること。」とされています(昭63・1・1基発1号)。
労使は、労基法上の最低労働条件よりも有利な合意を行うことしかできませんが、労使協定を締結することで労基法の例外規定が適用され、労基法に違反しないという効力(免罰効果)が生じます。
労使協定は、それだけでは労働契約上の権利義務は生じませんので、労働協約、就業規則等が必要です。また、締結により効力が生じるものと、締結+届出により効力が生じるものがあります。

3.労使協定の種類
(1)労働基準監督署への届け出義務のある労使協定

①労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合の労使協定
②時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)
③1年単位の変形労働時間制に関する協定届
④1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届
⑤事業場外労働に関する協定届(みなし労働時間が法定時間を超える場合のみ届出要)
⑥専門業務型裁量労働制に関する協定届
 
1ヶ月単位の変形労働時間制は就業規則に規定すれば、労使協定不要、10人未満で就業規則を作成していない場合は、労使協定をし届け出が必要。
(2)労働基準監督署への届け出義務のない労使協定
①賃金控除協定
②フレックスタイム制
③休憩時間の一斉付与原則の解除
④割増賃金の割増率引き上げ分に相当する有給代替休暇を付与する場合の労使協定
⑤年次有給休暇の計画的付与を行う場合
⑥年休日の賃金を標準報酬月額で支払う労使協定
⑦育児介護休業法に関する協定(適用除外の協定)
⑧時間単位の有給休暇の付与に関する協定