渋沢栄一著「論語と算盤」に学ぶ~その1

渋沢栄一は1840年の幕末に生まれ、明治維新後、大蔵官僚として日本経済の礎を築いた人物です。「日本近代経済の父」や「日本資本主義の父」とも言われ、銀行始め500社に及ぶ企業の創立、発展に寄与しました。道徳経済合一説を唱えた著書「論語と算盤」は、今もって企業の在り方について当てはまるものです。
ここでは、「論語と算盤」に記された事を「学び」という視点で、少しずつ取り上げていきたいと思います。

「富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することがきぬ。ここにおいて、論語と算盤という懸け離れたものを一致せしめることが、今日の緊要の務めと自分は考えているのである。」

「人間の世の中に立つには、武士的精神の必要であることは無論であるが、武士的精神のみ偏して商才というものがなければ、経済の上から自滅を招くようになる。ゆえに士魂にして商才がなければならぬ。やはり論語は士魂養成の根底にとなるものと思う。」


 論語から道徳を学んできたのが、武士的精神という「礼節や品格の文化」だと思います。日本独特の文化と言われる侍の心というべき、武士的精神こそが、我々日本人にとって生きていくために必要な素養です。これを、この現代で学べる書物が「論語」というわけです。

 私のなかでもあまり論語を意識はしていませんが、この「論語の教え」を幼児の頃から口によって様々な人から教えられてきたような気がします。
ですから、無意識に私のみならず、多くの日本人の素養として身についているのです。
 最近、日本に訪れる外国人が驚くことが、このことを裏付けています。たとえば、日本人の親切さや礼儀正しさ、治安のよさ、震災などの大災害での沈着な冷静な対応、時間を守ることなど律儀さなどです。
日本の道路にごみがないこと、どこにいっても綺麗で清潔であること、忘れた財布や貴重品が戻ってきたこと、路上におかれた自動販売機が多いこと(外国では壊され商品が盗まれるのが普通)なども、他の一例でしょう。

こうした、相手を慮る日本人の精神は、時代がかわっても大切にしていきたいものです。
ビジネスにおいても、利潤の追求ばかりを追うだけではなく、この道徳にに裏付けらた「社会的責任」を考え行動していくことが求められているのです。

参考文献:渋沢栄一著「論語と算盤」(角川ソフィア文庫)・同(超訳阿部正一郎訳総合法令出版㈱)